辺境にて

南洋幻想の涯て

藪の首

 もう伐採も終わってしまい仕事が無いので山賊の頭とふらふらしている。頭は夜ハブ捕りに行っているそうだが私は夜は眠りたいので行かない。

 そして今日も昼に定食屋でソーキ丼を奢って貰う。だがその前に最後に伐採をしていた現場に寄った。

 いつもの定食屋さんの女将に首を持って行くのだそうだ。何度聞き直しても女将に首を持って行くと言っている。頭の視線を追い高湿度の緑の密林の奥に首を探す。字面上では頭と首が並べばややこしい事この上無しだ。

 あの女将さんは元締めとか黒幕とか胴元とか、そういう類だったのだ。気をつけよう。頭と類が並んでもややこしいかと思ったがしかしそれは杞憂だった。

 最後に切って積んだ木から2本持たされた。これが首よ、と頭は言う。

 f:id:Chitala:20230325203939j:image

一番上の緑と赤の樹皮の木がクビ。煎じれば漢方薬になるそうだ。効能は聞き忘れた。KUBIではなくてQVI。

 首と定食屋に行き女将さんに頭を渡す。私は飽きもせずソーキ丼卵付きを頼む。頭を受け取った女将さんに何これと言われた。首が用法を説明したが女将さんは喜んでいるのか困っているのか私にはよく判らなかった。食事を終え頭を取り返し首を渡して定食屋を後にした。

 

f:id:Chitala:20230325212652j:image

 今晩もアクトクで焼肉をご馳走になった。この二週間で三度目だ。入れ替わり立ち代わり今夜も10名前後来た。前回居たおばさんも通りがかったがパチンコに大敗して元気が湧かないとの事で帰っていった。頭は大笑いをした。

 魔王も若い頃はここアクトクやヌミシャンまで飲みに来ていたそうだ。その頃は酔うと毎回どこかで殴り合いが始まっていたそうである。高齢化の進んだ今は喧嘩こそ観られないが、皆の豪放な立ち振る舞いに往時を偲ぶことが出来る。

f:id:Chitala:20230325214018j:image

 バケツ肉。禁猟期に入った為冷凍である。底が見えてくると新たにレンジで解凍されたものが投入される。


f:id:Chitala:20230325214245j:image

f:id:Chitala:20230325214249j:image

 頭にシシの切り方を教わったので後半は私が切り盛りした。玉ねぎの串刺しも私が作った。

 日が暮れ、お礼を述べて帰る際に、頭の兄からハブに気を付けて帰れよと言われた。またハブ捕り棒と箱はバイクに積んで置けとも言われた。私に捕まえられるだろうか。

 夜の廃校は当然真っ暗なので(灯りがついていたら怖い)校舎のはずれ、校長室までの道のりは確かにこれからの時季は危険だ。気を付けよう。

f:id:Chitala:20230325221545j:image

f:id:Chitala:20230325221622j:image

 この学校から小川を挟んだ向かいの廃屋にはシシが住んでおり夜間学校に通学している。今夜どこへ出掛けたかはこの隣人に知られてはならない。

 廃屋の方へ灯りを向け藪に目を凝らすとたくさんの首が生えていた。