辺境にて

南洋幻想の涯て

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

六畳下宿 -ゆめ-

夜の海は底も知れず恐ろしい。だが恐々と泳ぐうちに、泳ぎ方は昼と変わらない事に気がつく。慣れれば昼よりも疲れにくいぐらいだ。やがて自らの動作に合わせて光る夜行虫のルシフェリンに心を奪われ太陽の光を忘れる。

六畳下宿 -祭りの日-

西陽の断末魔。その最後の光線で周囲は赤と黒とがはっきりしてくる。それは警告色だ。何から何まで保護される退屈な世界が見せた隙である。さあ、クラスのみんなより一歩先を行き、人気者になろう。昨日までとは違う自分に変身するチャンスだ。

六畳下宿 -原生林-

夕陽への郷愁。それは日本固有の文化なのだろうか?それともヒト共通の感覚なのだろうか?それから世界は一瞬紺色になり、あとはずっと夜である。いつまでも見守ってくれていると思っていた太陽に見限られたのだ。住居の発明は同時に家路の発明でもある。

六畳下宿 -狩猟試験-

夕闇の寸前の金色から赤色への時間。偶然一緒に残った、あまり付き合いのない友だちとの特別な帰り道、または真っ直ぐ帰らず溜まり場になっていた友人宅からの帰り道。同じ空のくせに、ラジオ体操の朝の、水色で正しい光からはどこか抵抗したくなる道徳的な…

六畳下宿 -終末、公園で-

ノスタルジーが題材になる時、埃っぽい夕方が選ばれがちなのは何故だろうか。学校の管理下と保護者の管理下とのあわいの、自分たちの領分だったからだろうか。登校と下校はほぼ同じ道を行くのに、思い出に残っているのは大抵下校の方だ。