終末
ボルシチを作るために植えたビーツは全滅した。これで五度目だ。いつも芽は出て順調に伸びる。しかし間引きを考え始めた頃に全滅する。 去年魔王の畑に植えた一度だけ、幾らか収穫ができた。私の住んでいる海辺の廃校は冬風が強い。 芽が倒れて枯れるのでお…
ノスタルジーが題材になる時、埃っぽい夕方が選ばれるのは何故だろうか。学校の管理下と保護者の管理下とのあわいの、自分たちの領分だったからだろうか。登校と下校はほぼ同じ道を行くのに、思い出に残っているのは大抵下校の方だ。
いろいろな所で見かけるレンガを拾っては持ち帰る。バーベキュー台を作るのだ。魔王にも見かけたら拾って、と頼むと滝の集落にたくさん棄ててあると教えて貰った。 まだこれだけ。
今日は閏日、隠れた日。四年に一度巡り来る。
集落の忘年会へ行く。私は1月からこの集落の廃校へ住み着き始めたので忘年会へは初参加だ。
次に目覚めた時、風雨は少しおさまっているようだった。外へ通じるドアの天窓から見える外は青暗かった。
台風の猶予期間は残り二日。スュリの農園で魔王を手伝う。
地獄へようこそ。と私のフランクな監視員は言ったらしい。
梅雨も終わりに差し掛かって毎日雨だ。ビニールハウス内で出来る仕事をするしかない。
時々、廃校の屋上に登って海を観る。海の向こうに本島南端の港町が見える。
注意:この記事には虫の写真が有ります。 四月の上旬終わりぐらいから次第に気になり始めたエッチ虫はもはや屋外に出る気がしない程の数になった。数なんて物では無いもはや量だ。1匹2匹と数えるよりも空間の体積から頭数を推計すべき密度で飛んでいる。
いつもながら仕事もなくふらふらしている。農業は手伝っているが、去年マンゴーの時期が終わった時に10万円もらったきりだ。こんなものは仕事とはとても呼べない。収入という目で見れば高校生のバイト以下だ。 魔王も自分で出来るうちは自分でやると言ってい…
内地の叔父叔母が工具と一緒に食料品を送ってくれたので分けてやる、来い。と魔王から電話があった。喜んで貰いに行った。 パイの実もあったが撮影をまたず食べてしまった。 甘いお菓子には目がない。
別の集落だが凍った肉や魚を定期的に大量に呉れるおばあさんが居る。この食糧援助は私が廃校へ来てからの約3ヶ月続いている。おかげで日雇いのない日は廃校に引きこもって過ごせている。 大変助かるが当然もの凄く気をつかう。だから援助の打ち切りを何度も…
昼休みは旧軍の廃墟の近くでとった。弁当を食べ終わり潮の引いた浜で野焼きをしていると一番無口な幹部が鋸を持って海の方へ歩いて行った。貝を拾うらしいので私も後に続いた。
ふたたびの抜錨を夢見て眠る。
甘い目算に拙い技術、多大な労力と情熱を注ぎ込んだ蟹味噌色のリビングに荷物を運び込む。朝から夕方まで荷運びに費やした。今夜からは延々と片付けをしなければならない。本棚に少し本を納めたところで睡魔がやって来たので荷物を押しやって寝袋に包まった。…
ここ数日、日中は農業や林業で働き、夜間は12時まで校長室の床を紙やすりで擦るという暮らしをしている。床さえ完成すれば荷物を搬入し、ここへ移る事ができる。早く移って久方ぶりの独りの時間を満喫しよう。渡海時に知らず失った自分の時間。床を磨き続け…
裏返し終わった床板を磨く為の最終兵器電気やすりが届いた。これで膠着した床板戦争に一気に終止符を打てる。
先月遺品整理で頂いた有名ブランドの赤い箱はしつらえてあった蓋も赤く塗り、宅配ボックスとして利用させてもらう事にした。 かわいい。
発電所の事故により未完成のまま放棄された。今は木々に抱かれて眠る。最近は騒がしく感じているかも知れない。
本日で最後に休日が観測されてから83日目、もう休日はこのあたりには居ないのかもしれない。
今日は強風で船が出なかったので林業日雇いは休んだ。明日は柑橘栽培の研修に行く予定をしていたが今日より風が強い予報なのでやはり船は出ないだろう。参加は辞退した。
当日誌開始以前。 スュリの魔王から離れて安住の地を探している旨と、「魔術の家」の事を林業の休憩中に語っていると、日雇い仲間である前住人から廃校の校長室の話を聞いた。そこで早速次の休みに下見に行った。内地の友人に自慢しようと電話をしながら…
日曜日に予定されている集落作業の後、ついでに初めての校庭管理をしようと思い前任者に地図を描いて貰って下見に行った。 私の描いた地図と違い解りやすい。オレンジの斜線が私の担当域になるそうである。
注意:この記事にはクモの写真があります
毎日伐採の日雇いに行っている。離島から海を渡ってわざわざ本島側まで伐採にいくのは私ぐらいのものだそうだ。だからかどうかは解らないが社長は色々食べさせてくれるし免許も取らせてくれたりする。
かつて炭鉱で栄えた島。 案外最近まで採掘をしていたようだ。 訪れた記念として石炭をもらった。 団地とか病院とかあまり感情をみせない廃墟で、でも誰かがそこで日々を確かに生きてた。そういう痕跡をみるのが好き。
これから住む予定の廃校①部分まで辿り着けるよう伐採をし、ついでに周囲を偵察し地図を作った。図の中央下部がコンクリ橋であり、ここから上へ進入する。北とかそういう高度な事は斥候ではないからわからない。