辺境にて

南洋幻想の涯て

買い物難民

 別の集落だが凍った肉や魚を定期的に大量に呉れるおばあさんが居る。この食糧援助は私が廃校へ来てからの約3ヶ月続いている。おかげで日雇いのない日は廃校に引きこもって過ごせている。
 大変助かるが当然もの凄く気をつかう。だから援助の打ち切りを何度も申し出てはいるのだがこれが最後と言っては数週間に一度食品を持って来る。彼女は猫にちゅーるをあげるのが好きなので同じような感覚なのかもしれない。

 周囲の人も結構野菜やお菓子など呉れるのだがこのおばあさんはわざわざ買って来てまで呉れるので何か特別にお礼をしなければと考えていた。
 あれこれ悩んだ末、お話しが好きなおばあさんなのでお茶に招待する事にした。私は昔から紅茶が好きでゴールデンルールもちゃんと守っている。
 何も持ってこないように念をおしておいたがそれは無駄だった。持って来てくれた惣菜パンをおやつに朝のお茶会になった。冷蔵庫はまた一杯になった。

 おばあさんはスマホに関する事や、何故か受けることになった脱炭素に関するインタビューなどいくつか困り事を抱えていた。スマホの問題を解決し、インタビューには意識の高い人向けの薄っぺらい回答を考えてあげた。彼女はとても助かったそうでしきりに私を誉めて喜んでいた。
 成る程、私が周囲にできるお返しとはこういった事だったのだ。それから一時間ほど過ごして彼女は帰って行った。




 良い天気。





 魔王が海岸のスーパーに買い物へ行きたいというので久しぶりに廃校を出てついて行った。




 車道は途中で草に飲み込まれていたので車は置いて防波堤の上を歩いていく。

 この先に

 あるべきスーパーマーケットは無く白い砂浜が広がるばかりである。どうやら波にさらわれてしまったらしい。
 買い物かごを提げたまま辺りを探してみる。










 大きな岩を登っていき高いところから探す。






 



 スーパーに電話をかけると漂着を繰り返しながら営業を続けていると言う。




 人ひとりしか通れない崖を回り込み前進を続ける。

 何か意味ありげな流木が立っている。



 抜こうとしたが砂の下に大きな本体があるらしくびくともしない。

 段々と日が暮れて来た。


 もうスーパーは追いつけないほど遠くへ流されてしまったのかもしれない。











 というのは冗談で、本当は飾りになるような流木や貝を拾いに来た。今日歩いたりよじ登ったりした岩場の海岸ルートは魔王が小学生の頃の通学ルートだったそうである。昔は道が無かったとはいえタフな子供達だった様だ。