辺境にて

南洋幻想の涯て

スーパー義理のブラザーズ

 とうとう離島側の仕事も終わってしまった。最悪5月頃まで仕事がないそうだ。しばらくゆっくりした後はそこらで土方をしている見知らぬ人々に声をかけて仲間に入れてもらおう。

 私は内向的な癖に人見知りはしないのでこういう時気楽に構えられて良い。この様な辺境はどこだって労働力不足なのだからどうにでもなるだろう。最悪食べられそうな革靴や革鞄だってある。

 


f:id:Chitala:20230306195410j:image

f:id:Chitala:20230306195413j:image

食べられる草の種類もたくさん教えてもらった。

 とはいえ、まずはクローゼットよりも眼下に広がる豊穣の海に目を向けるべきだ。趣味としての釣りには興味はないが食糧を得る為とあらば話は違ってくる。確か廃校のどこかに釣竿が捨てられているのを見た。


f:id:Chitala:20230310204242j:image

f:id:Chitala:20230310204247j:image

 しかし早速探してみたものの釣竿と思っていたのは銛だった。海にはあまり入りたく無い。

 実は私がここへ来た昨年5月から今日に至るまでまだ一度も海水に触れていない。肌が弱いので海水は刺激が強すぎる。更に日光過敏も少しある。つまり暖かい南の島なんてそもそも向いていない。豊饒の海は一旦忘れよう。

 釣り竿探し中、校庭にヒッピーかホームレスみたいな人がワゴン車で車中泊しているのを見つけた。私が委託されているのは雑草の刈り払いであるからイノシシ同様問題がない限りは放って置こう。何らかの事情で内地にいられない人間なども流れて来るのでお互い余計な好奇心は起こすべきではない。サブイベントなど全力回避だ。

 


f:id:Chitala:20230308120515j:image

f:id:Chitala:20230308120532j:image

依然魔王宿サグラダファミリアの開業手伝いもしている。タダ働きなので前住人が捨てていった物をせめてもの報酬として持ち帰る。この日はバケツとタライ。

 他にやることもないので海を眺めながら紅茶を飲んだり気が向いた日は宿の手伝いをして過ごす。私と同集落の兄弟に応援を頼んで魔王と二人では運べなかった流木を運んだりもした。


f:id:Chitala:20230310205325j:image

f:id:Chitala:20230310205307j:image

f:id:Chitala:20230310205316j:image

 この兄弟は私と同程度に背の低い兄、テレビ局を定年退職した島出身の魔王の同級生と、全体的にパーツの長い教員の内地人の義弟からなっており、内地とこの集落を一月ぐらいのスパンで行ったり来たりしている。

 私と年は離れているものの兄弟どちらも話し易く、よく紅茶に誘ったりコーヒーに誘われたり互いの家を行き来している。もっとも廃校を家と呼んで良いのか判らないが。

 2人とも口髭を蓄えており、いつも兄弟一緒に居るので有名なゲームシリーズのブラザーズを彷彿とさせる。

 知り合いになって半年も経たないのにもうずっと前から知っている様な気がする。あの頃は2Dアクションだった。

 

f:id:Chitala:20230310205852j:image

この日はブラザーズの家に豚キムチを作りに行った。ブラザーズは釣った魚でもてなしてくれた。

 

 流木運びをお願いした時は集合場所のスュリ魔王屋敷へ同じ様な原付に似たようなジェットヘルで現れたのでブラザーズのカートレースみたいだった。笑った。


f:id:Chitala:20230310213444j:image

f:id:Chitala:20230310213454j:image

f:id:Chitala:20230310213503j:image

 そしてわざわざ屋敷まで来てもらって軽トラ2台に乗り換え、前回大きくて諦めた流木を遥々拾いに行ったのだが魔王は枝ぶりが気に入らないからやっぱりこれは要らないと言い始めた。まさかとは思ったが本人が要らないというのは仕方がないので帰った。