ようやく妹が会いに来てくれた。
五日間の休みが取れたそうだ。初日は14時本島発のフェリーで来て最後は7時35分のフェリーで帰るので、一緒にいられるのは3日と半日だ。
もちろんこの間は日雇いは休んだ。
妹の来る日は弟家族の来島最終日と重なっている。弟達は海で遊び、魔王と私は畑仕事をしている。私が中断し港へ迎えに行った。
久しぶりの再会なのだが何故かあまりそういった感覚もなく、つい先日ぶりのように話しながらスュリまで戻った。妹がこの島に来るのは4年ぶりになるのだそうだ。まあ1人で来てもヒッピー系や自分探し風ばかりしか居ない魔王界隈は、そういった文化が好きでない限り居心地が良くないだろう。
その夜は弟一家と花火などした。
この3日間、妹は私の住む廃校校長室に共に寝泊まりする。バイクの後ろに妹を乗せてスュリを発った。
私から色々なエピソードを聞いている、山賊のお頭を見たいと言うので渋々アクトク経由で帰校する。余計な事を言うのではなかった。
行ってお頭の顔だけ見て即帰るなんて訳にもいかない、そもそもそんな意味不明な事をする理由が無い、夜遊びの時間が無くなると説得したのだが、一瞬遠くから見るだけで良いからと言って聞かない。動物と勘違いしているようだ。
それでも2人、夜バイクで走るのは楽しかった。そして幸運にもお頭は留守だった。ハブ捕りへ出掛けているのだろう。
4夜しか居ないので出来るだけ夜更かしをして遊ぶ。ゲームをしたいと言うのでダークソウル3を代わるがわるプレイした。このゲームは難易度が高くすぐに死んでしまうので、妹はすぐに飽きるだろう。と思ったが楽しんでやっていた。
私は「冷たい谷の踊り子」というボスで詰まっている。後少し、と言うところで逆襲されてはやる気を無くし諦めていたのだが、今夜は妹が辞めると言わないので継戦した。妹の方が根気があるのかもしれない。
何度目かわからない私の順番が来た。いつもならとっくに辞めているはずの低いテンションで戦う。しかしそれが奏功した。後少しと言うところでも冷静なままだったためだ。いつもはつい畳み掛けようとして雑になり逆襲されていたのだ。踊り子を倒した。
踊り子の装備を得た。
それから、妹が私と観ようと思っていたというアニメ、メイドインアビスを視聴した。
これはアビスと呼ばれる大穴の底へ探検に出かける少年少女の話なのだが、隠そうともしない作者の趣味性癖により皆やたらと悲惨な目に遭う。すぐに悲惨耐性がついてくるぐらいには悲惨だった。妹がめっちゃ可愛いと言うナナチというキャラクターが途中出てきた。なるほど可愛い。とても可愛い。そして悲惨な目に遭っていた。深夜までかけて一期の総集編を観て眠った。
翌朝は弟一家を西の港まで見送りに行き、この日のみスュリで朝食を摂る。パンとサラダと目玉焼きだった。
パンにはオーシャンリゾートな宿の女主人が作ってくれたという、バンシロのジャムが添えられていた。このジャムはこれまで食べてきたジャムの中でも首位争いをする美味しさだった。
因みにもう一方の優勝候補は魔王の母、私の今は亡き祖母が作ってくれるスモモのジャムである。
それからは妹と共に昨夜の庭での夕餐の片付けをし、市場へバンシロも出しに行った。魔王は畑仕事をしているので、また夕方来ると言い残して2人でドライブに行った。
まずは昼食だ。私の好物、西の港のご飯屋さんのソーキ丼を食べに行く。もちろん卵付きで。
料理を待つ間に行ってみたいところを聞いたが別にないと言う。どこへ行ってもスュリと大差無く同じような景色だからと言う。確かにその通りだ。この離島の観光地も目ぼしいものはとっくに行き尽くしたそうだ。
ドゥッカマのライオン岩は知らないと言うのでとりあえずそれを観に行く事にした。配膳されたソーキ丼を食べてドゥッカマを目指す。それにしてもここのソーキ丼はいつ食べても美味しい。
ドゥッカマは相変わらず人の気配がしない。これまでに四度来たが、最初にお巡りさんを見かけたことがあるだけだ。そのお巡りさんは1人で何かを探し回っていた。
一列になり防波堤の上を歩いて行く。端の方まで来ると、後ろ、ライオン岩。と書かれた浮きがある。そこで振り返ると遠くにライオン岩が見える。
ライオンに見えるだろうか。
妹は初めしばらく見方が解らないようだった。スマホで写真を撮り画面上で説明する。
ようやく解った様で感動して喜んでいた。良かった。
上手になぞれないがこんな感じ、寝そべったライオンの横顔だ。
ライオン岩を観たのでもう行くところがない。何ヶ所か提案したが、それより廃校に戻って遊びたいと言う。私もその方が良かったので帰校した。紅茶を淹れ、夕方までゲームをしてスュリで夕食を摂る。帰校しさらに引き篭もって遊ぶ。また紅茶を淹れた。
その夜はメイドインアビスの続きを観た。翌午前中も2人で過ごすと魔王には言ってある。家でアニメを観るなんて文化は老魔王に理解できるものではないのでドライブへ行くと言っておいた。