辺境にて

南洋幻想の涯て

山の謎の檻

注意:この記事には虫の写真と鳥の死体の写真があります。

 今回の校庭管理林業、農業後の夕方2時間ほどをあて、4日で終わった。つまり一日割けば終わる仕事だと判った。

 グラウンドの校舎B寄りを刈り進んでいる内に蜂がたくさん飛んでいるのに気がついた。ヘルメットのシールドを上げ辺りを見れば30匹程に囲まれている。

f:id:Chitala:20230617080409j:image

 大型で黒くオレンジの翅。うっかり巣に近づいたかと慌てたが襲って来ない。近づいては来るものの少し私を観察しては離れて行く。自然と触れ合いすぎて、遂に虫と交信できるようになったらしい。私にも魔王の素養が…?

 夕方のチャイムが鳴ったので草刈りをやめ、大型で黒くオレンジのしもべ達に手を振り別れ、アクトクの路上焼肉へ向かった。

 

 

f:id:Chitala:20230617174044j:image

上等なシシ肉。ところでシシというのは猪の事である。ライオンではない。

 

 そこで山賊のお頭に、私の心が清らかなあまり蜂に襲われなくなりましたと告げた。

 お頭は私に、お前のしもべ達はジバチと言うもので刺さない、と教えた。つまらない。

 羽蟻が三度飛び、ジバチが出てくれば梅雨が明けるのだそうだ。

f:id:Chitala:20230617080438j:image

私以外は刺すよう教えようとしたが虫なんかに話かけても無意味だ。

 


f:id:Chitala:20230617174449j:image

f:id:Chitala:20230617174455j:image

f:id:Chitala:20230617174503j:image

草刈り中、体育館裏に階段を見つけた。青い鳥が絡まって死んでいる。

 

 草刈り最終日は魔王がまた押しかけて来た。働き者だが粗探しばかりするのでやはりいない方が気が楽で良い。そういえば彼女?とどうやら別れた様だ。支配的な性格だからだと思う。ある種の依存心だ。支配したがるのは魔王だから仕方がない。女好きだからまた次を見つけるだろう。


f:id:Chitala:20230617081009j:image

f:id:Chitala:20230617081019j:image

f:id:Chitala:20230617081014j:image

f:id:Chitala:20230617081023j:image

綺麗になったので海を渡ってクニャの役場に報告だ。

 

 その後昼までスュリで畑仕事をした。午後からは魔王は宴会準備をすると言うので帰った。誘われたが反抗期なので断った。なぜ断ったのかというと反抗期だからだ。

f:id:Chitala:20230617180847j:image

 昼から翌日という久しぶりの自由時間の塊が手に入ったのでツーリングをする事にした。いつもは行かない滝の集落の方へ行ってみた。滝を眺め、集落を抜け、海辺の製塩の集落へ。いつか来た時はここで引き返した。行き止まりのようだったからだ。しばらく海を眺めた。

 向こうから白い軽バンがやってきた。海の向こうからではない、海沿いの道の先からだ。

 窓から長い腕がニョキニョキと生えてこちらに手を振った。シオマネキの威嚇の様だ。まるで車の付喪神だ。夜なら逃げ出していただろう。大型で黒いのが乗っている。

 飲み友達のMさんだった。まああんなに車から腕が出るのは大男のMさんだろう。

f:id:Chitala:20230617180750j:image

 Mさんからこの先もまだ進めると聞いたので教えられた通りに進む。

 次の集落に出た。一度魔王と来て以来、行き方のわからなくなっていた滅びゆく集落だった。橋を渡る。

 家はたくさんあるが一世帯を除いて全て空家である。もうここには区長しか住んでいない。


f:id:Chitala:20230617205420j:image

f:id:Chitala:20230617205411j:image

f:id:Chitala:20230617205416j:image

f:id:Chitala:20230617205424j:image

 バイクを停めて少し歩く。家の建っていたであろう空間に残るタイルは浴室の跡だろう。ひっそりと静まり返った集落に蝉の声だけが響いている。

 再びバイクに跨りこの集落も後にした。また山に入る。巨大な木の根、ヒカゲヘゴ、木漏れ日が地面に描く模様も綺麗だ。誰とも行き違わない荒れかけた道をどこまでも走る。

 

 視界の端に妙な干し藁のようなものが映った。わざわざこんな山の途中に藁を干すものはいない。何だろう。

 バイクを道の端に停めて、山の斜面にあるそれを見上げてみる。

f:id:Chitala:20230617195245j:image

 藁でカモフラージュしているが何かの入れ物のような形をしている。


f:id:Chitala:20230617195826j:image

f:id:Chitala:20230617195837j:image

f:id:Chitala:20230617195832j:image

 シシを獲る罠かと思ったが、それにしては出入り口の板が薄い。シシなら簡単に破るだろう。それにシシの罠は、うっかり突っ込んだ脚を紐で締めあげる物だと聞いている。トラバサミの紐バージョンだ。この罠で捕える適当な動物が思いつかない。ヌートリアカピバラ

 野生の勘が働いたので中に入るのは思いとどまった。


f:id:Chitala:20230617201100j:image

f:id:Chitala:20230617201054j:image

f:id:Chitala:20230617201105j:image

 それからもツーリングを続けた。やがて知っている場所に出た。牛小屋を過ぎたところ、以前お頭に雇われ働いた、野苺のたくさんある現場の近くだ。今日は新たな道を見つけた。

 最後にスュリの手前の小峠を走っていると動物の死体が落ちていた。毛が全くなく、グレーがかったピンク色をしている。頭はほぼ骨になっており、犬だかシシだか分からなかった。エイリアンのようだ。気持ちが悪いので写真は撮らなかった。

 

 その夜は夢をみた。役場からの委託を受け、山中の謎の檻にエイリアンが入っていないか調査をする夢だった。準公務員扱いの良い仕事だった。