今夜は廃校で宴会だが出す料理が何もない。日雇いからの帰りは出港ギリギリで船に飛び乗ったのでスーパーに寄ることもできなかった。
廃校まで後少しの所にSちゃんとその義理の弟Kさんがいた。舟釣り帰りのようだ。バイクを停め声をかけたらピエロみたいな魚三匹と小さいクエのような魚を一匹呉れた。ラッキー。
これを刺身と煮付けにしようと思ったが私は刺身の切り方を知らない。
またネットで調べながらかと考えながら廃校に帰ると、校庭に滝の集落の大男Mさんが居た。釣竿を持っている。つまり大男Mさんは魚を捌くことが出来る。お願いして私はシャワーを浴びた。今日はついている。
やがてヒンジャ髭のYちゃんも来たので校庭の護岸で陽が暮れるまで飲んだ。太陽が沈みきった後は校長室で飲んだ。ヒンジャ髭のYちゃんの紹介でT兄という人も来た。
みんなそれぞれ料理を作ってきてくれたのでテーブルの上は賑やかになった。私はピエロ魚一匹とクエ風で煮付けを作った。好評で良かった。Sちゃん兄弟のおかげだ。
T兄は私と同じく酒好きだった。4人で深夜まで飲んだ。
翌日は集落作業の日だった。酒が残ってふらふらになりながら学校の横の木を切り進む。シシが住んでいる廃屋まで到達した。ヤブ蚊が酷かった。
集落作業にはSちゃん兄弟も居た。今Sちゃんの家にはSちゃん、Sちゃんの奥さん、Sちゃんの娘、Sちゃんの孫娘、義弟とたくさんの人がいる。夏休みに入ったのでみんな内地から遊びに来ているのだ。
昨日のピエロ魚のお礼も兼ねてみんなを紅茶に招待した。
最近は台風の影響で天気も不安定だ。日雇いも有ったり無かったりする。朝6時前に中止の電話が来ればその日は畑へ向かう。
この時期、魔王フルーツ農園の朝は「宝探し」から始まる。ネットに落ちているマンゴーを見つけて出荷するのだ。
マンゴーは樹上で熟するとひとりでに落果する。それを樹上完熟マンゴーと呼んで販売している。外観の良くないものは加工用に卸したり来客に食べさせたりする。外観の良いものと味は同じだ。
もちろん作業の間に隙あらば食べる。
予約受付順に箱詰めしていく。クロネコの集荷が来るまでに準備が終われば一安心だ。
マンゴーが終われば次はドラゴンの収穫だ。棘で刺してくるのでかわしながらドラゴンスレイヤーでちょん切っていく。生命力が強く、剪定したものをその辺りに投げておくとそこからまた根を出したりする。
ドラゴンの内地からの注文は滅多にないのでほぼ島の市場行きだ。去年はマンゴーと抱き合わせで認知度を高めようと画策した。だがドラゴンの禍々しさが引き立つだけだった。まあ努力の甲斐あって少しづつだが注文も増えてはきている。お盆のお供えという謎の需要がある。
仲間思いのドラゴンが連れて行かれる兄弟を見送りに来る。
少しかわいそうだが仕事だから仕方ない。元気でね。
いってらっしゃい。