辺境にて

南洋幻想の涯て

雨の中

 梅雨も終わりに差し掛かって毎日雨だ。ビニールハウス内で出来る仕事をするしかない。

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 校長室の屋上排水問題は詰まったパイプを切る事で解決した。校舎Aの給食室は雨漏りが放置された結果天井パネルが落ちている。そうなる前に処置ができて良かった。

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給食室。左奥の天井は崩れている。

 スュリの農園ビニールハウス内では防風林用のクェグィが育って来た。少し大きいポットへ植え替えた。マンゴーの吊り直しや新芽取りもする。

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 タンカンの摘果の講習があったので朝から久しぶりに海を渡って参加して来た。魔王の同級生の元警官Iさん(今はタンカンの先生)はいつも親切にしてくれる。情熱的で、眉がシーサーの眉に似ている。もちろん農協、農林課も親切にしてくれる。

 13時30分ごろに終わったのでそのまま役場へ行き、六月の校庭管理の報告と写真の提出を済ませた。14時の船に間に合い離島へ帰った。

 久々に本島のクニャに行くから食料品の買い出しをと思い、バックパックまで持って来たのだがそれは次の機会にしよう。14時の船を逃せば次は16時20分まで船はない。

 スュリへは行かず、まっすぐ廃校へ帰った。雨が酷い。セソの港からはバイクだからずぶ濡れになった。シャワーを浴びて洗濯をし、薄暗い校長室で雨の音を聞いているうちに眠ってしまった。

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 夕方、雷鳴で目が覚めたので夕食にした。買い物に行かなかったので袋ラーメンだ。残り3つの卵のうち1つを入れた。麺を食べた後の汁に冷やご飯を入れてどうにか腹を満たした。まだ缶詰も有るし冷凍庫にはヒンジャカレーがたくさん凍っている。もうしばらくは大丈夫そうだ。

 それから何度か役場からの放送があった。崖崩れや土砂災害の警戒警報を発令するとの事だ。19時にはとうとう高齢者の避難勧告が出た。獣のように風が唸っている。詰まった排水パイプを切っておいて良かった。でなければ今頃雨漏りとの戦いだ。

 区長が集落のスピーカーで何か放送をしたが、最後の方の「公民館へ」という部分しか聞き取れなかった。もしかしたら高齢者の避難が始まっているのかもしれない。人手がいるかもしれないので作業着に着替え、校長室を出た。荒天の日はテンションが高い。


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 外は酷い雨、ひっきりなしに稲光りが辺りを照らすのでライトが要らない。遠雷が聞こえる。

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 人家の明かりはまばらだ。この集落も空き家の方が多くなったのかも知れない。公民館へ行ってみた。電気は点いておらず真っ暗だ。

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 次によく食べ物を呉れる高齢者宅へ行ってみたがここも電気が点いていなかった。留守のようだ。

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 最後に区長宅へ行き、何か人手がいる事が有れば電話して下さいと伝えて帰った。誰も避難などしないようだ。一人でうろちょろしてまたずぶ濡れになった。

 探検気分で学校も見回ったが特に何も無かった。


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 私が住み始めた当初から端の教室の出入り口には板が打ち付けてある。誰かがゾンビ対策をしたのだろう。

 映画やゲームでは容赦なくゾンビを銃で撃つが、完全なゾンビ治療薬が発明されたら主人公たちはどうするつもりだろう。

 ここは海辺の廃校だからゾンビvsサメなんてB級の舞台にもなるな、と馬鹿な事を考えながら今度こそ帰った。

 明日は島のあちこちが崩れて通れなくなっているだろう。スュリまで辿り着けるだろうか。