辺境にて

南洋幻想の涯て

ここまでの記録:チェルノブイリ⒈

 地獄へようこそ。と私のフランクな監視員は言ったらしい。

 その事は今日明日二日間契約の、キーウで雇った通訳から聞いた。日本語しか解らない私はキーウまで独り困難な旅だった。途中で頓挫する可能性も覚悟していた。

 

 遂に、と思った。二の句は浮かばなかった。

 決して兵士にカメラを向けるなと言われた。それから、原子力発電所は撮影してはいけない。これは日本でもそうだ。警備の人員や配置などを下調べされては危険だからだ。

 元市役所の建物の電光掲示板には「本日の放射線量」が表示されている。

 私と通訳、案内人という名目の監視員の三人で、奇妙なテーマパークと化した廃墟を進む。

 我々を針金のような像が出迎えた。彼女は「世界の最後に現れラッパを吹く女神」だそうだ。

 それからもう世界に二つしか残っていないレーニン像。皮肉にもソ連の惨事「チェルノブイリ原発事故」によって破壊を免れた。誰もここへ近づく事ができなかったためだ。そしてもう一つは森の奥にあるらしい。

 

 

 

 事故によって住めなくなった町々の標識の間を通る。振り返ると標識は黒く塗りつぶされていた。「これは、この町のエリアはここまでという意味に過ぎない」と聞かされたが何もかもが暗示的に見えてしまう。