注意:この記事は虫だらけです。
台風で出荷出来なくなった余波を受け島中で果物があふれている。日雇いの休憩などにまでマンゴーが出たりする。
持って帰れと方々で果物を持たされる。果物は下剋上を起こし、果物が夕食の夜もある。食事とデザートの主客転倒。皮や種はキッチンの三角コーナーへ堆積していく。そこで水分をある程度切り、そして傍らの蓋付きゴミ箱へ移すのだ。
やがて悲劇が起きた。コバエを発生させてしまった。肥沃な三角地帯の居心地は相当良かったようで、そこに初期コバエ文明が興った。
あちこち飛びまわっている。馬鹿にして交尾をしながら飛ぶヤツまでいる。人口爆発を遂げた彼らは大航海時代を迎え、遂に寝室にまで進出してきた。とても寛げない。このままでは校長室を乗っ取られてしまう。それに週末は校長室でパーティだ。彼らの文明がまだ黎明期である間に滅ぼさなければ。
まずはキッチンの蓋付きゴミ箱を外に出すことにした。シシが来そうだがそれはその時考えよう。三角コーナーは捨てた。そして屋内で飛んだりとまったりしている者を延々叩き潰す。
2日はこれで駆除を進めたが、運動神経の良いものばかり生き残ったのか段々と回避されるようになってきた。とまっている時彼らは細かくダッシュするのだが、明らかに速いのと遅いのがいる。そして今はやたら速いアスリートばかりだ。ちなみに彼らは殺虫剤が効かない。殺虫剤の缶に蛹までつけられた。馬鹿にしている。古代コバエ文明は淘汰選別されスパルタのような精鋭国家になってしまった。
作戦変更だ。できれば金はかけたくなかったのだが仕方がない。本島側のクニャでコバエのトラップを購入した。
しかしこれは全く効果がなかった。ここでようやくネットで対策を調べた。今戦っている敵はノミバエという種類で、私の設置した物はショウジョウバエ用だった。効かないはずだ。そして麺つゆトラップという物も知った。洗剤を数滴垂らした麵つゆの匂いでコバエを誘引し、溺水させる罠だ。早速作ってみよう。
食器はそんな事に使いたくないので鉢の受け皿を使う。翌日戦果を確認した。しかし期待外れだ。たった数匹しか獲れていない。だが逆に考えれば誘引され溺死した者がいるのだから、餌次第ではもっと獲れるのではないだろうか。
それから、捨てる前の洗って置いてあるペットボトルにもよくとまる事に気がついた。蛹が付いている事もある。理由は不明だがこの形は彼らにとって魅力的なのだろう。
形状や餌で幾つかの種類の罠を作り効果的な物を探る。
捨てる予定のタッパーには水+麺つゆ+普通の酢。
次に前述のコバエトラップの中身を捨てた容器。これは2つあるので比較用にそれぞれ、水+普通の酢、水+きび酢と2種類の異なった餌を入れた。
そしてペットボトルの上半分を切除した物とペットボトル丸ごと、この2つはタッパーと同じ餌を入れた。形状の違いで効果を比較するためだ。夏休みの自由研究みたいになってきた。
最も効果のある物を量産し、この戦争は終わるはずだった。だがここで新たな勢力が参戦する。クンミャト(ゴキブリ)だ。
麺つゆトラップの記事には確かに「酢の匂いはゴキブリも誘引してしまいます」と書かれていたが来るのが早すぎる。
校長室の近くにある給食室には中身入りの巨大な魚醤タンクがたくさん遺棄されており、クンミャト文明はそこで栄華を極めている。多分。気持ち悪いからわざわざ調査しない。
そして前々回の台風時にはそこから校長室へと侵入し興った遠征クンミャト国も存在したのだが、それはブラックキャップ(罠)と物理攻撃で滅ぼした。
以降室内で見かける事は無くなった。筈だった。
しかしこのノミバエ戦争の混乱に乗じ、彼らはクンミャト国の再興を掲げ電撃的に侵攻を開始したのだ。もうやってられない。
だが校長室を開け渡す訳にもいかないのですかさず叩き潰しトイレに流した。その夜は時々罠の様子を見に行き、現れるクンミャトを追加で2匹潰した。明らかに多すぎる。誘引されているのだ。
そんな戦火の夜を二夜過ごし、ノミバエの数もかなり減って来たので一旦罠の効果を確認する。酢を入れた効果かどの罠も死屍累々である。気持ちが悪いから数まで数えなかったが餌はきび酢、罠はペットボトル丸ごとが最も効果があるようだ。全部で50から80匹は溺水させたと思う。こんなに発生していたのかと思うと気持ちが悪かった。すぐにトイレに流した。
ちなみに最も戦果の挙がらなかった罠はタッパーである。水面の表面積が大きい分たくさん誘き寄せそうなものだが意外な結果であった。
またきび酢は普通の酢と比べて立ち昇る香りの強さが段違いであり誘引効果が高い。これがために屋外のクンミャトまで誘引しているのだろう。使うなら一晩程度に留めたほうが良いのかもしれない。
今日からは残党狩りだ。そして残念ながらパーティは今夜だ。駆除は間に合わなかった。せめて目立たないように大人しくしていてくれれば良いのだが。とりあえず誰もキッチンに入らせないようにしよう。
深夜2時、パーティは無事に終了した。リビングにも少しはノミバエが居たが、そんな事を気にするような彼らではなかった。滝の集落の大男Mさんは刺身とキムチを使った韓国料理(名称忘却)を、私は喫茶店のナポリタンをそれぞれ作った。Mさんは在日韓国人なのでいつも美味しい韓国料理を作ってくれる。
今夜は四名だった。
ところで果物が誘引するのは虫だけではないようだ。最近スュリの農園を観に来た釣りのユーチューバーたくわんさんが、魔王農園のバナナでチヌという魚を釣り上げていた。虫なんかじゃなく魚がキッチンに集まれば良いのに。