辺境にて

南洋幻想の涯て

冬の校庭管理 上

 タンカン植え付けの片手間に冬の校庭管理も行う。

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 畑は四時ごろには引き上げ、それから日没まで校庭の草を刈る。草刈りはもう慣れてきたので仕事とは言え苦は無い。それは独り金色の風景に包まれて一日の終わりを噛み締める静かな時間だ。第三者から見れば腰にノコギリを下げ、さらに機械で回転するノコギリを縦横に振り回すモンスターの出現する物騒な時間だ。

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 草を刈ると鳥たちが虫を目当てに降り立ってくる。黒い烏は遠巻きに、白い小鳥は近くに刈った後を付いてくる。かわいい。


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 それから犬。学校の近所のおばあさんが散歩をさせている時と隣の集落のおじいさんが散歩をさせている時、ふた通りあるので飼い主がよくわからない。芝に転がって背中を掻くのが好きらしい。もちろん犬の方がだ。


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 夜はシシが来る。彼らは来る分には勝手なのだが、私の刈った後をでこぼこに掘り荒らすので困る。次に草刈りがしにくくなる。

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 学校は未だ皆の憩いの場所らしい。ここに住むため校庭管理を引き受けているだけなのに、綺麗になったよく働く、と感謝されたり褒められたりする。作業中は果物を貰ったり道具をわざわざ貸しに来てくれたり手厚い。


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 今回からは刈った草を校庭の隅に押し遣るのではなく燃やす事にした。


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ウシノフグリ。青臭く酸っぱい。相変わらず美味しくない。

 それを聞いた木工棟梁は、一人では危ないからと夫婦で手伝いに来てくれた。彼らはそろそろまた内地に上る。次は二月に来島するそうだ。


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 彼らは島を去るその前日まで私の仕事を手伝ってくれた。そしてお金などは受け取ってくれないので、謝礼のつもりで最近スュリで獲れ始めたマガンをたくさん食べさせた。

 


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後で知ったが、マガンを罠で獲るのは違法だそうだ。今後は川を歩いて探さなければならない。

 


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使用期限が切れる発煙筒で着火した。非常に眩しく煙も酷い。


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せっかくだからまた焼き芋を作った。ムルマーサガバケ!(とても美味しい)

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 無事校庭管理は終わった。今回は校庭の隅に堆積している、過去色々な人が捨てて行った残渣も少し燃やした。


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 残渣をどけた奥の方では野良洗濯機が死んでいた。

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 何となく近づくと学校の裏に砂浜を見つけた。

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 校庭のこちらの隅は、集落内や近辺で伐採された草木が押しやられ、足の踏み場が無かったので近付いてみたことがなかった。だから浜があるなんて知らなかった。野良洗濯機の死骸を踏み学校の外壁へと登り、そのまま浜に飛び降りた。

 浜は狭く、すぐそこに見えている石垣で行き止まりのようだ。

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 石垣は家屋の遺構だった。この小さな浜にあったのはこれだけだ。

 どこにも繋がっていない、秘密の砂浜を見つけた。

 満足し、学校へ引き返す。その途中、右手の薮にトンネルになっている場所を見つけた。中に入ってみた。

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 トンネルは中の方は広く立って歩ける。道が別れている。集落の方向へ進む。

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 根の迷路の中には色々なものが落ちている。最終的には学校の裏道にでた。ここは藪で行き止まりだと思っていたが、こんな道があったのだ。

 

 正門の方へ回ると木工棟梁夫妻に出逢った。私がどこかへ消えてしまったので帰るところだと言う。しかし校門から集落に出る所で犬に阻まれてしまったのだそうだ。

 指さす方を見る。校門の先の県道に確かに2頭の犬がいた。首に鐘のような大きめの鈴と発信機が付いている。猟犬だ。ビーグルと、もう一頭は種類が分からない。こっちへ向かってくる。