辺境にて

南洋幻想の涯て

旅路⒉

 離島ではそこで手に入らない相当種類の品々がネットでの購入になる。画像を見るだけでの買い物だから思っていたのとは違う、という事もよくある。先月などはスケジュール帳のつもりで買った物が日記帳だった。大したスケジュールも無いのでそのまま使っている。

 だから大阪行きが決まった時、同時に「手に取って選んで買う物リスト」の作成が始まった。足拭きマットなどのただの日用品群だが。

 妹の退勤を待つため会社付近の百貨店に入った。幼い頃、祖父母とのお出かけと言えば百貨店だった。行けば何かしら買って貰えた良い思い出が有るためか、いまだに私は百貨店が好きだ。

 祖母の若い頃は、休日に百貨店へ行き上階のレストランで夕食を食べるのが「行楽」だったそうだ。それは現在のモールでの暇つぶしに行動は似ていても質的に異なったもののようである。家族で百貨店へ行く事自体がステイタスなのだ。だから「買い物」ではなく「御出掛け」なのだろう。

 そして格のある百貨店の紙袋は大事に保存され、来客に何かを持たせる時に「こんなんで宜しければつこてくんなはれや」と、さりげなくも嫌らしくお目見えさせるのだ。

 だがもう百貨店というもの自体が時代遅れなのだろう。開いた自動ドアから店内に踏み出すのがためらわれるほど店内は伽藍としている。

 エスカレーターで上階の本屋を目指しつつ、適当な階で降りては冷かして周る。

 足拭きマット、枕カバーを購入した。そしてつい余計に下着やお菓子まで買ってしまった。それから日の沈むに連れてどんどん気温が下がってきたのでマフラーも買ってしまった。ちょっと入っただけで7000円の出費だ。先が思いやられる。犬歯でマフラーのタグを切り首に巻く。本屋に入った。と同時に妹から会社を出たと連絡が来た。本は見る事なく去り、待ち合わせ場所へ向かう。

 翌日もこんな風に妹と合流し、地下から空中にまで至る都市の散歩を楽しんだ。


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 街は色で溢れており見ているだけで楽しい。


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 美味しいものもたくさん食べた。

 


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 夜は懐かしい地元の友人夫婦と酒を飲む。大昔に私の母がウェイトレスをしていたという所へもハシゴをした。とは言え当時のままなのはビルだけで、中の店舗は入れ替わっているのだが。この夜はその辺りで記憶を失くした。

 友人夫婦は相当出費しただろうが金は受け取ってくれなかった。この夏島に遊びに来たいと言うので歓待しよう。

 

 寝泊まりは妹も住んでいる母宅でしている。ここでは猛獣ズグジジを預かってもらっている。今回連れて帰ろう。

 猛獣と言えば私の母は病的に、いや医者に見せれば何か病名がつくであろう異常な癇癪持ちである。いわゆる狂犬である。

 狂犬と言えば母の飼育しているシーズーが、鬱だかなんだか精神病でカウンセリングに通っているのだそうだ。初めは冗談だと思ったのだがどうやら本当らしい。犬用精神安定剤まで服用している。


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まだ3度しか会っていないのによく懐いている。

 最近は以前のように散歩を楽しめないんです。などと獣医さんに悩みを打ち明ける犬を想像し笑い、癇癪持ちのもう一方の狂犬に吠え立てられる。