弟も妹も去り、また酒と肉体労働の日々が帰ってきた。字面だけ見ると酒池肉林のようである。
魔王と新規開墾のタンカン畑への水道敷設工事を再開する。ツルハシでアスファルトを割るのは残り4割といった所だったが、幾ら頑張っても少しづつしか割れない。右手首から肘の関節までが痛くなってきた。
前回は怒りに任せてツルハシを振り回していたので、それなりの力が発揮されていた様だ。アスファルトに水を染み込ませてみたりもしたが、妹と数日過ごした私はすっかり毒が抜けてしまったらしい。歯が立たない。
アスファルトにドリルで穴を開けて水を流し込み、少しづつ剥がす事にした。腹を立てていたとはいえ、よくこんなに硬いものを割り進めたものだ。
Make an abyss.
割り終えた溝にパイプを埋め込む。
一部、パイプは他人の畑の外周を通る。そこはその人の畑にも一箇所蛇口をつける事で了承を得た。
最後にコンクリートを練りパイプを埋める。これで山中の水源地からの水がここまで繋がった。今後この畑でも川の水が農業用水として利用可能だ。
昼、お頭から電話があった。半日で済む仕事があるから手伝わんか。と言う内容だった。ちょうど水道を敷きひと段落だったので参加した。
仕事の場所は私の住むウシキャク集落だった。ある屋敷の庭の、伸び放題になっている木々を切る仕事だった。
現場にはお頭と相棒のTさん、さらにもう1人元請の人が居た。私は切られた木を集めて更にチェンソーで刻み、軽ダンプでそれらを捨てに行く。捨て場所はなんと廃校の校庭であった。校庭はまた僅かに面積を減らした。しかしダンプという物は初めて使ったがとても便利である。
たった半日しか働いていないのに、元請は何と一万円も呉れた。お頭から翌日の仕事も誘われたのでこれも受けた。
夕方、妹が買ってくれたエルデンリングが届いているはずなのでスュリへ寄った。ソフトはベンガル嬢が受け取ってくれていた。
廃校へ帰る。最後の日のままのテーブルなどが切ない。
シャワーを浴び、夕食を済ませ、ゲームを始めた。このシリーズはしばらく進めないと協力プレイができない筈だ。
ゲーム開始時に素性を選ぶ。私は島に閉じ込められているので「囚人」で始めた。容貌も骨格からかなり細かく作れるのだが、私はセンスが無いのでネットでレシピを調べ、そのまま真似をした。自分で作るとものすごい化け物が出来上がる。好みのアレンジを加えただけでも途方も無い化け物が出来上がる。おまけに数時間浪費する。
それから妹と連絡をとり、初のマルチプレイを始めた。通話にはディスコードというアプリを使う。妹は「盗賊」だった。
このゲームにはしばしばキーワードとして黄金律と言う単語が出てくるが、おそらく彼女達はルールなんて知ったこっちゃ無いだろう。盗賊と囚人の旅が始まる。
しかし始まってすぐに他のプレイヤーから攻撃を受け一撃で全滅した。このゲームは協力プレイをすると、自動で敵対プレイをしたい人も参加できる様になり侵入者としてやって来る。
しかも初心者狩りが横行しているそうで、再びゲームを始めても五分ぐらいで侵入者が現れ、何か帯電した強力な武器の一振り二振りで全滅させられる。流石に面白くなかったので妹がソロプレイをするのを視聴しながら雑談をするのに切り替え、この日は終わった。
翌日は、土砂崩れで塞がった道の木を切って捨てる仕事だった。担当した崩れは本島セッコ方面の林道から2箇所だ。
我々が木を切り片付けると、後日土木の会社が来て土を片付け整備する、そして再び道の繋がりは回復される。
ジュラ期みたいな所だった。
夜はまたゲームだ。妹は侵入者対策を調べてきていた。それは1人づつ接続をブロックすると言う強引なものだった。まあ侵入者だって、対戦に関して全くやる気のない我々と繋がるよりもどこか他所へ行った方が楽しめるだろう。そういう事にしておいた。この次は協力プレイの内容までよく調べて購入しよう。
ブロックをし続けていると段々とゲームも快適になって行った。2人で城の奥へ奥へと進んで行く。仕切り直して、ネットで繋がった盗賊と囚人の旅はようやく始まる。