辺境にて

南洋幻想の涯て

ドラゴンの檻

 そろそろ私も農業に注力していこうと土地を借りた。本拠地スュリの屋敷周辺で休耕地の持ち主達に打診して回る。皆よく知った人達なので快く契約書に判をくれる。お金も取らない。

 


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果樹は利益が出るまで年数がかかる。それまでは林業の日雇いを頑張っていこう。かわいがってくれる本島の方の日雇い会社で、知らない間に四人目の幹部になっていた。

 

 私の主力はタンカンにする。この島へ渡った時は売れ筋であるマンゴーを増やすつもりでいた。しかしマンゴーは基本的にビニールハウス栽培である。台風の常襲地であるこの島ではハウスを守るか作物を守るかという選択を毎夏のように迫られる。

 そこで半年ほど悩んだ結果、マンゴーは魔王の作っている分だけにして、私は路地栽培のタンカンを植える事にした。

 そして副作に収穫期間の長いドラゴンフルーツ。ドラゴンには赤と白がある。少しレア品種だという魔王のレッドドラゴンを株分けして貰う。

 タンカンはまだ土地の開墾もしていないのでまずはドラゴンから着手した。現在魔王が栽培しているドラゴン畑の隣接地を耕す。自家消費用の野菜を栽培していた畑だ。


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塗炭を引き抜いて魔王のドラゴン畑と繋げる。ドラゴン畑の面積は倍以上になる。

 ドラゴンはサボテンの仲間だそうでトゲトゲしている。これが塀や柱の様なしっかりした物の表面を這って伸びて行く。そして大きな花が咲き禍々しい感じの実をつける。

 こうした蔓の様な育ち方をするので棚に這わせて育てているのをよく見かける。魔王は自分で色々試したようで、少々独特な支柱様の構造物で栽培している。

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最初期の自転車のスポークを利用した物。しかし捨てられている自転車に限りがあった。


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現行は列ごとにパイプを渡している。

 私のドラゴンの支柱は、そこから更に低コストで部材の交換も簡単な物を目指す。魔王とあれこれ考えて試作品も作ってみた。


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 これは全てVPで作ったもので金属部分が無く、錆を心配しなくて良い。それにコストも抑えられる。しかし想像以上に強度がなかったので没案になった。

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 最終的には支柱はこれまで通り蓋をした単管パイプにし、棚部分はパイプを一本減らす代わりに芯入りVPにした。従来の物に比べて耐用年数もおそらく長く、また資材費もこれまでよりは安く抑えられる。これで作る事にした。

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 部材の必要個数を拾う。小さい部材はネットで注文する。重くて送料の高額な物、単管パイプやVPといったそもそも送れない物は本島へ買いに行く。

 フェリーに軽自動車を載せると片道3千円もかかる。だからこういう事でも無いと本島に車で行かない。車を渡した時は兎に角有効活用をしようと買い物リストを片手に走り回る。

 そして昼は必ず回転寿司へ行く。大抵は魔王の奢りだ。これが車で本島に渡った時の楽しみである。タッチパネルのサーモンを連打する。魔王はうどんで腹を膨らませようとしている。サーモンを連打する。

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 それから支庁に魔王の素泊り宿の開業申請にも行った。未だに手をいれ続けていて開業の見えない、魔王謹製素泊りラストダンジョンだ。当然ハイ明日から良いですよとはならず、今来て居る何とか課と消防署にも書類をたくさん作成して提出しなければならない。

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 わからないからお前が聞いておけ、と投げられたので途中からは真面目に聞いた。途中からなので余り解らなかったが提出書類には印をつけた。後で読みながらやろう。ところでこのサグラダファミリアはいつ完成するのだろうか。まだ宿の名前すら決まっていない。書類に何と書こう。

 

 2メートルの鋼管55本と沢山の買い物、民宿ラストダンジョンの宿題も積んで車高のかなり下がった軽トラで離島へ帰る。

 既にある鋼管と合わせて計81本にコールタールを塗りVPを切って取り付け、地面に打ち込んでいかなければならない。ここからは地道で大変な作業だ。そしてレッドドラゴンが殖えたらラストダンジョンに放してやろう。