辺境にて

南洋幻想の涯て

ドラゴン園の完成

 ドラゴンの杭を完成させる。そして早く日雇いに行かなければ収入がない。それ以上に日雇いがストレス発散になっているので早く行きたい。

 地面への杭の打ち込みと魔王から株分けしてもらった苗の植え付けまでは終わっているので、最後は上部の棚だ。

 海向こうの港町クニャの材料屋さんにつけ払いで鉄筋16本を注文し、14時のフェリーに載せてこちらの港へ渡してもらった。フェリーにはこんな使い方もある。

 鉄筋が港に着く時間より早めに屋敷を出た。途中、魔王のふた従兄弟から船を引き揚げる手伝いを頼まれていたためだ。イキョオの桟橋へ寄る。


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 魔王とふた従兄弟、それにウセ集落の人と私の4名で船の台座を押す。そしてボートスロープから海に滑らせた台座に船を載せ、最後は車で引きあげる。

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 台座を落とすまでは良かったが操舵がうまく行かないようだ。

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ずれた。

 

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轢いた。

 

 フェリーの着く時間が迫って来たので仕方なく去った。帰りに再び様子を見に行った頃にはなんとか終わっていた。

 この鉄筋でドラゴンの杭は材料が全て揃った。引き続き屋敷の庭で、神経質で口うるさい老魔王とたくさんの蚊と強い陽射しに耐えながらドラゴンの棚を作る。


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 前回の日雇い終了以降ストレスの溜まる日々がおおよそ一ヶ月も続いたが、それもしばらくは終わりだ。私のドラゴン園が完成した。墓標みたいだ。


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 幹部に連絡をとり、農業はカタがついたと告げる。今回は別の会社からも声がかかっているので掛け持ちの段取りをした。また皆と楽しく働く日々を思い、安心して眠っていると誰か来た。

 イキョオでオーシャンリゾートな宿を経営しているRさんとその母だ。魔王のドラゴンを見学に来たと言うので案内した。


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 Rさんに花は取って棄てると説明した。するとRさんは、これはもしかして食べられるんじゃないかと言う。もらって帰って良いかと言うので棄ててあったものから綺麗なものを選って渡した。

 ひとつ齧ってみたら無味でシャキシャキとした食感だった。料理の飾り付けに良いかもしれない。

 翌日Rさんはドラゴンの花のエスニックなスープと手作り蓬餅を持ってきてくれた。とても美味しかったので今後は私も花を食べよう。


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 それからある日曜日は、シーカヤック大会だった。この集落の桟橋が折り返し地点なので集落みんなで応援する。農業は休みをもらった。テントを張り、対岸のクニャから漕いで来た選手たちに声援を送る。

 休憩を希望するカヤックを流されない様に捕まえ、お茶や素麺を振る舞う。打ち上げのバーベキューも楽しかった。


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 またある日はトラップの中にミカンコミバエが見つかったので駆除のバイトをした。この虫は台湾の方から風に乗って飛んでくる。もし定着してしまった場合は根絶宣言が出るまで果物を島外に出荷することができなくなる。恐ろしい虫だ。

 今回は滅びゆく集落で見つかったのでそこを中心に駆除を行う。誘殺の札を持ち、走る軽トラの荷台に乗り、針金をU字に曲げて引っかかりやすいようにしては投げ、大体30m間隔で木の上の方に引っ掛けていく。ちょっと楽しい。


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 間の集落内では徒歩であちこちに札を下げていく。また新たに廃校を見つけた。


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 針金と木でできた札は独特の痺れるような臭いがある。最後は朽ちて自然に帰るのだそうだ。

 無事に駆除できますように。