辺境にて

南洋幻想の涯て

地獄の釜の蓋の上

 お盆の間は働いてはいけない事になっているが、およそ休の字のつく熟語を憎んでいる魔王に伝統だの風習だのは通じない。区長なのに。

 この三日間は盆周りと言って縁のある家へ互いに行き来し線香をあげる。だから誰か一人ぐらいは来客に対応するために屋敷に居なければならない。だが屋敷には私と魔王しかいないため畑へ出れば無人になってしまう。しかし本当にそうだろうか。

 実は盆の間はご先祖さまが裏の墓から屋敷に来ている。つまり我々が畑に出ても屋敷は無人ではない。盆周りの来客への留守番はご先祖さまに任せ農地に出た。

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ベンガル嬢も居る。
 盆の初日Sちゃんトラボルタに手伝って貰い、4人でフンギャラ撒きを半分程終わらせた。

 お盆二日目、フンギャラ撒きを終わらせる。朝8時から14時までかかった。この二日間はひたすらにフォークを振るった。年間を通して最も疲れるのがこのフンギャラ撒きだ。それから幼ドラゴンに肥料をあげた。

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10〜20トンの山を綺麗さっぱりビニールハウス内へと運び込んだ。


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幼ドラゴンに花実はまだ早いので、窒素とカリウムのみの肥料を撒く。

 次の日、お盆の最終日。私のタンカン畑予定地に山水を引く。材料は時々藪などで拾っては持ち帰っていた廃材類だ。


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藪や山には色々な物が棄てられている。資材の宝庫だ。

 山水はスュリ川から屋敷へと農業用水を送水している水道から分岐させる。

 水道パイプの途中には、空気や泥を途中で排出する為設けたエアー抜き用の排水バルブがある。

 しかし余り使わないのでその用途はやめ、そのバルブへ新たな水道パイプを接続延長し、タンカン畑の農業用水とする。


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 いつか拾った長い鉄パイプを山の入口の排水バルブまで運ぶ。


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 水道パイプを埋める穴を掘る。鉄パイプは川を渡す。


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 分岐にタンカン畑へ向かう水道パイプを接続し、川を渡した鉄パイプにバン線で括っていく。水道パイプは埋める。 

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 これで対岸までは水は引けたが今はここまでしかできない。集めていた廃材の中にはサイズの合うパイプがもうない。残りの購入しなければならない材料の種類や数を計算してメモに取った。次回本島へ車で渡る時に忘れずに買ってこよう。

 夕方は留守番のご先祖さまを裏の墓へと連れて帰った。ご先祖さまも屋敷で歓待されるかと思いきや労働を強いられさぞ驚いただろう。

 お供えのリュプをたくさん持ち帰った。凍らせておいて少しづつ食べよう。

 お盆明けの1日は夜叉日と言ってこの日も仕事をしてはいけない。地獄の釜の蓋が開いているので怪我をするのだそうだ。しかし魔王は魔王だから地獄の釜なんて関係がない。

 特に機械を使うのを忌むこの日、わざわざ私に草刈りを命じた。地獄を挑発してやろう。

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 だが遂にご先祖さまの怒りを買ったのか雨天になり草刈りはできなかった。仕方がないのでビニールハウスでマンゴーの新芽の誘引などをした。