辺境にて

南洋幻想の涯て

心霊写真の話

 本日はお盆の最終日。お盆と言えば幽霊だ。ひと月半ほど前、日雇いの休憩中に聞いた怪談を記す。食べられる野草果物や貝類を教えてくれる、一番年長の寡黙な幹部から聞いた話。

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 彼はこの話をしてくれた前日まで、自宅のリフォームのためにしばらくの間仕事を休んでいた。

 そしてその休暇中、玄関横の部屋を整理していると古いアルバムが出てきたそうだ。

 片付けには脱線が付き物である。幹部がなんとは無しにそのアルバムを開くと、貼られずに挟まれていた一枚の写真が足下に落ちた。

 それは昔、同級生達と記念に撮影した集合写真だった。

 現像された時点では何も違和感の無かったごく普通の写真。だが久しぶりに陽の目を浴びたそれはもう普通の、とは呼べなくなくなっていた。

 まず、ある同級生の首の横に赤い円が写り込んでいる。こんなものは当初はなかった筈だ。

 そしてその赤い円から赤い線が、その同級生の首へと伸びている。

 幹部は気がついた。これは首を吊る縄だ。

 赤い線が首に絡まっている同級生は、後に神社で首を吊って亡くなった人物だった。赤い円と線は、首を吊る輪と紐だったのだ。

 また、同様にならんで移っている別の同級生の女性。彼女は全身が真っ赤になっている。この女性の身にこそ幸い何もなかったのだが、その彼氏が後に非業の死を遂げたという。一枚の写真の中に二つも暗示的なものが現れている。

 幹部は、気持ちが悪いからお祓い出来る人を知らないか?と笑っていた。

 写真をどうしても見てみたかった私は、それを神社に持って行き塩をまぶして燃やすので下さい、と頼んだ。しかし断られてしまった。燃やした事にして持って帰ろうとしているのを看破されてしまったためだ。

 ではせめて携帯で写真を撮ってきて見せて下さいと食い下がったが、携帯が呪われるとこれも拒否されてしまった。

 

 その幹部もこの話を聞かせてくれたおよそ一月後に、腰痛悪化でしばらく休む。と別の幹部へ連絡を入れ、それっきり音信不通になってしまった。その写真の中に写っている幹部にも何か変化は現れているのだろうか。頼りになる人物なので早く戻ってきてほしい。

 

 しかし、心霊写真に理屈を求めても仕方がないのだがどうも赤い輪には違和感が残る。

 もし首を吊ってしまうのを暗示なり警告なりしようとしているのなら輪はその人の首にあり、紐はどこか上の方へでも延びていれば良い。

 だが、独立して存在する輪から紐が伸び、首に絡みついているという幹部の見方が正しいのなら、それは「吊られた」または「吊るす」という意味に受け取れないだろうか。まあ亡くなった人についてあれこれ言うのは品の良い事ではないからもう辞めよう。だから幽霊話は「友達の友達」の話なのだろう。

 

 後日の路上肉で、トラボルタを怖がらせようと上記の赤輪襲撃説を発表した。だがパイセンち(廃校)の方が怖いス、と返されてしまった。

 

 


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 そうでした