辺境にて

南洋幻想の涯て

準備の日々

 もうすぐ私のタンカンの苗約100本が届く。勿論約なんて数で届くはずはなく、正確な本数は数えて伝えてあるのだが、メモを執らないからすぐに正確な本数を忘れてしまう。

 兎に角苗の来るそれまでに植え付ける準備をしておかなくてはならない。

 予定地は薮の開墾までは終わり今は更地だ。先日までに魔王に手伝って貰い川の水も農業用水として引いた。

 次は猪防柵(いのぼうさく)で畑を囲う。そして直径60cm深さ30cmの穴を本数分掘り、そこに堆肥5kgと、ようりんという肥料1kgを混ぜておく。約100本だから肥料は全部で大体600kgだ。これらを全て手作業で行う。眩暈がしてくる。


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資材は本島からフェリーでやって来る。

 生活の為に日銭も稼がなくてはならない。だから日中は林業日雇い(日当制なだけで正確には日雇いではないらしい)で働き、その後の日没までの数時間をこれら農作業に充てている。

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猪防柵作成中にセットハンマーの木製の持ち手が折れ中断した。だが翌日の日雇い中、薮から金属製の上等そうなのを拾った人があり、それを貰った。神々が働けと言っている。

 もちろん日曜日も畑に出るので休みなしだ。もっともこれは普段通りだが。雨が降らなければ2週間に1度程度しか休めない。そのかわり雨や台風の多い月は休みばかりだ。晴耕雨ゲームの日々だ。


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 妹とプレイしているエルデンリングはおそらく終盤に到達したと思う。ストーリーをまっすぐ進めたい妹と、洞窟などに寄り道をしてアイテムを見つけたい私とで意見が別れる。

 これは現実の旅行スタイルにおいても、細かくスケジュールを作り印刷をして持って行く妹と、目的の地域に行き当たりばったりで向かう私との違いとして表れている。2人で旅行に行くと段取りが全て組み上げられておりとても楽だ。たまには旅行行きたい。

 それから、レベルが上がったためか理不尽な初心者狩りも来なくなった。だから出逢うプレイヤーを片端からブロックするのもやめになった。両手に短刀を持ち切り込む妹と、遠くから魔法を撃ちまくる私で自然に役割分担も出来ている。これも自然にこうなった。やはりそれぞれの性格を反映している。


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 ある日は農具の展示即売会があったので魔王と海を渡った。


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 展示会は思ったほどには盛大ではなく小ぢんまりとしている。刈り払い機を購入し、福引を6回まわしたが全て外した。参加賞に卵を貰った。

 この日は魔王の弟夫婦が内地から旅行に来る。だからついでに空港まで迎えに行った。帰りには久しぶりにスーパーで買い物ができた。釣魚ばかりいい加減飽きていたので豚や鶏の肉を買い込んだ。凍らせておこう。また、叔父夫婦が好きなものを買ってくれるというので、好物だが高価で手の出ないサーモンの柵とヨーグルッペ1ケースを買ってもらった。

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 叔父夫婦の観光案内の為に一日休みを作った。ウシキャクで車が故障し、珊瑚垣の島のSちゃんに車を借りるトラブルはあったものの、叔母には楽しんでもらえたと思う。叔父はここで育っているから今更観る物がないので行きたくないと駄々をこねていた。


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ガジュマルの枝に褪せ人からのメッセージを見つけた。

 昼は私の好物のソーキ丼へ誘導し、奢ってもらった。デイゴの集落の交流館で昼食になりかけたが巧みな話術でこれは回避した。危なかった。もちろん交流館の食事も美味しく、私の好きなベリー類のタルトもあるのだが、やはり西の港のソーキ丼が一番だ。


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アンキャバ戦績や体験交流館へ行った。夜光貝を磨いてアクセサリーを作れる。

 観光案内も数度目の経験になり、時間や現在地から計画をたてるのが上手になった。完成した魔王宿は、面倒な客を避けるために知り合いの紹介しか受け付けていない。その宿泊客相手に観光案内のバイトをしてみても良いかも知れない。


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 農作業は叔父も手伝ってくれ、猪防柵がようやく完成した。叔父夫婦が帰った日からは、およそ100の植え付け穴を掘り始める。芝居を観た日を除いて、日中に林業をして夕方に農業をする同じ一日を繰り返している。変化があるのはゲームの中だけだ。日曜日も消防団の訓練や集落作業、そしてその後は農業と忙しい。

 こうして働き続ける私の評判はなかなかに良いようだ。遠いサネクの区長まで私を褒めてくれているらしい。島の東端だ。田舎のネットワークは光回線より速いと魔王は言うがその通りだと思う。

 こうなってしまうと今更本来の怠惰な性質は誰にも見せることができない。日中の疲労から釣りも最近はやめてしまった。娯楽といえば週に数度、眠る前の数時間行う、妹との狭間の地での冒険だけだ。

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叔父夫婦が帰ったので久しぶりに一人で夕食を摂る。楽しみにしていたノルウェーサーモンの塊だ。サーモンが釣れるなら、いくら疲れていようが夜ごと釣りに出かけるのに。

 今日も日没までプレーリードッグのように穴を掘る。いずれこの苦労が結実し、生活が少しでも楽になる日を夢見て。

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